内閣府が今国会に2法案を準備

 

 全国災対連は3月15日、内閣府と懇談を行いました。

 その結果、内閣府が今国会に2法案を準備していることが判りました。

(災害対策法制企画室の説明については別項参照)

 

 法案は、①「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」と、②「大規模災害からの復興に関する法律案(仮称)」(新法)です。

 

 4月上旬に閣議決定し会期中に両院通過を考えています。法案内容は閣議決定後にオープンの予定です。

 

 法案の土台にあるのが、中央防災会議が設置した「防災対策推進検討会議」の「最終報告~ゆるぎない日本の再構築を目指して~」(平成24年7月31日)です。

 

 全国災対連では最終報告を分析し、前進面と問題点があることが明らかになっています。

(下記 最終報告の問題点・課題メモ 参照)

 


最終報告の問題点・課題メモ

(全国災対連)

 

1章

「災害から国民を守り、国を守ることは政治の究極の責任」

【問題点・課題】「災害から国民を守り、その営みを守り、さらに国を守る」とあるが、「国」とは、現状の政治・経済体制全般を含むものであり、それが「政治の究極の責任である」という結論は、論理的に矛盾している。”国家的な緊急事態”を念頭に置いたものと考えられる。

「「国難」ともいうべき大規模災害を意識する」

【問題点・課題】大規模災害対策への意欲を示しているが、「資源に限りがあるため、対策の優先順位を見極めることも必須となる」とトーンダウンしている。

2章

「住民一人一人が防災に対する意識を高め、自らの命と生活を守れるようにすべきであり、それが可能となるように住民のエンパワーメントを行政や官民の諸団体が後押しすべきである」

【問題点・課題】実際には社会的弱者(障害者、高齢者、在宅介護者、幼児など)や危険な地域など多様な状況と環境の下にある住民個々人の現状を直視することなく、住民のエンパワーメント(可能性)を後押しするとして、自助を強要している。

「地域で市民同士が助け合い、行政とも連携しつつ市民の協働による組織・団体が積極的・主体的に地域を守るような社会づくりを普段から進めておく」

【問題点・課題】地域を守る主体は住民であり、行政に関しては”行政とも連携して…”と行政の役割について薄めている。住民が主体となり共助によって地域を守る、とは行政の責任回避と言わざるを得ない。

「企業・組織の事業継続や供給網の管理、保険制度や相互支援の取組などを通じて、災害リスクにしたたかな市場の構築が必要である。さらに、防災が新たな製品やサービスの創造につながる市場も目指すべきである」

【問題点・課題】全国展開している大企業を対象としたもの。地場産業を考慮したものではない。特段政策として取り上げる必要はない。

3章

「災害応急対応が困難になる事象(複合災害)においては、災害対応に大きな欠陥が生じることが懸念される。複合災害の発生可能性を認識し、防災計画等を見直し、備えを充実する必要がある」

【問題点・課題】対応体制や訓練を求めるだけで根本対策に言及していない。

「現行法の基本的枠組みでは対応が困難となる可能性があることを想定」、「治安の維持や金融機能の維持など、国家として存立していくための対策が不可欠であり、そのために十分な法的備えを行っておく」、「国民保護法制等の緊急事態を想定した他の制度も十分参考とすべき」

【問題点・課題】「武力攻撃事態処理法」(H15年)、「国民保護法」(H16年)、「特定公共施設利用法」(H16年)等を想定し、法整備を求めている。これらの法制度は、武力攻撃等を前提とした、国(政府)による災害事態の認定、対処措置に関する重要事項の策定を定め、これに沿って指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関等が実施するというものである。

「緊急措置の範囲は、帰宅困難者対策や治安維持等の観点から、その範囲を拡大する必要がないか、検討すべき」、「会議を開くことができない状況下において、物価統制など立法措置を行うことが必要となった際の対応について検討すべき」

【問題点・課題】①「国家的な緊急事態」と言いつつも、目的は治安維持と経済統制であり、災害における最重要課題である被災者の救助対策が主目的となっていない。②国民保護法の場合にも該当するが、国が「対処措置に関する重要事項の策定」を行うといっても、被災地の実態が的確に把握できない国が「重要事項の策定」を行うことは出来ないし、行えば現場の実情と乖離したものになる。③「治安の維持」に関して言えば、阪神・淡路大震災の教訓からも、最も深刻な問題は被災地において住民が避難した後の防犯・治安(窃盗・放火など)対策であり、それは「国家として存立」などとは無関係。④「経済統制」については、大規模災害といえども被災状況は地域によって差異があり、一様ではない。場合によっては、被災地における自発的な事業再建・再開を阻害しかねない。

「基本理念では、「自助」、「共助」、「公助」の、それぞれの理念や役割について、「公助」の重要性とその限界を踏まえつつ、法的に位置付けるべき」

【問題点・課題】基本理念の最初に「自助」から始まり、「公助」を後景に追いやっている。本来、いかなる自然災害であれ、国(政府)は憲法第25条に基づき、国民の生存権、国の社会保障的義務があることは明らかで、憲法原則から見て問題がある。「公助」の限界を踏まえることが必要としている。予め「公助」の限界を踏まえて行政の役割(責務)を法規制するということであり、地域社会との関係で言えば、従来通りのトップダウン計画と言うことになる。しかも(法規制された)コミュニティ防災計画の内容に「共助」の役割を明記することになる。それは地域社会の任意団体・組織が法的に防災責務を負うという前代未聞の話であり、重大な問題を含んでいる。

「事業継続計画(BCP)の策定・改善を促進するため、支援措置の充実や的確な評価の仕組み等について制度化を図る必要がある」、「日本企業と海外企業のBCPの相互の信頼性を高め、行政と企業のBCPの整合性も向上させていくべき」

【問題点・課題】事業継続計画は、企業自身が国際市場において不可欠な危機管理を行うこと。この分野に防災政策が介入するのは的外れ。

「PFIの手法等を活用して民間と連携して行うなど、行政の災害対策と民間のビジネスを有効に組み合わせた防災対策を促進すべき」

【問題点・課題】PFI手法を導入して危険市街地内に公共施設の建設を促すもの。この分野に防災政策が介入するのは的外れ。

 

 

内閣府政策統括官(防災担当)付

災害対策法制企画室の説明(要旨)

2013年3月15日

【文責:全国災対連事務局】

 

 中央防災会議の防災対策推進検討会議の最終報告の中で、法制的に見直すべきといわれているものを中心に、今回法案を準備している。最終報告のエッセンスは、東日本大震災の教訓・課題を受け、行うべき防災対策の全般的見直しとしての4項目である。

 ◇災害から生命を守り、被災者の暮らしを支え・再生する取組

 ◇災害発生時対応に向けた備えの強化

 ◇災害を予防するための多面的な取組

 ◇円滑かつ迅速な復興への取組

 

 今回新たにできるのは2法案である。「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」を、第2弾の改定として行う。新たに、「大規模災害からの復興に関する法律案(仮称)」を作る。今通常国会に提出する。閣議決定を4月上旬と想定している。法案は予算関連法案ではない。

 

 「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」の大きなポイントとして3つ。1点目は、災害発生時に避難の支援が特に必要となる者についての名簿の作成である。次に、住民等の円滑かつ安全な避難を確保するための措置の拡充である。あと、国による応急措置の代行についてである(都道府県が壊滅的な影響を受けた時、国が応急措置の代行を行えることを新たに定める)。災害時要援護者名簿の作成と、避難所については、最終報告の第3章の第1節((2))に書いてある。第2節((2))に、都道府県が壊滅的な時に国が応急措置を行える仕組みについて書いてある。

 

 「大規模災害からの復興に関する法律案(仮称)」については、最終報告の第4節「迅速かつ円滑な復興への取組」の、復興の基本方針作成、関係行政機関における施策の相互協力など法的枠組み等の提言を受けて、新法として準備している。この法案が通れば東日本大震災と同様のメニューが可能となる。

 

 第4節の提言があって、「大規模災害からの復興に関する法律案(仮称)」については法制化がなされている。その他の第1節、第2節、第3節、第5節については、第1弾、第2弾を含めて災害対策基本法で基本的には対応している。

 

 都道府県が壊滅的な打撃を受けた時の国の応急措置の代行については、第2節の国家的緊急事態の対応となる。

 

 第3節の基本理念を法的に位置づけるべきなどは、災害対策基本法で法制化される。災害対策基本法の中で、理念規定的なものを設ける。

 

 「防災の主流化」については、検討会議ではそういうこと(災害対策については防災が主流との意味)である。

 

 緊急対策での最重要課題としては救助対応ということは変わっていないが、今まさに議論している南海トラフ地震、首都直下型地震になった時には、経済が国の経済としておかしくなる可能性があり、そういうことを念頭に入れた国家的は緊急事態ということである。災害応急対策の中に、治安維持や経済統制も課題となってくることが想定される。国による災害事態認定や対処措置等々を定めていることや、地方公共団体が実施をする問題などについては、東日本大震災の想定外の想定の教訓を踏まえて、議論がなされた。災害対策基本法の本来の趣旨は踏まえて改定を行っている。大規模災害が発生している状況であり、これにかこつけて治安維持を強化するということを言っているわけではない。

 

 原子力災害に関しては特化したものではない。原子力については別の法律があり、いろんな災害での基本的な部分がこの法案の中身である。一般法と基本法の関係については変わらない。

 

 地方分権といわれているので地方自治の考え方を阻害しないように、緊急時に何でもかんでもやるということではない。