全国災対連ニュース 2012年1月31日 第79号
東日本大震災被災者の生活再建と復興へ
全国災対連総会 さらに支援を強化
全国災対連は1月24日午後、東京・豊島区の東京労働会館ラパスホールで、東日本大震災の被災3県代表をはじめ、加盟17団体・39人が参加して第13回総会を開きました。
総会の第1部「東日本大震災被災地の復旧・復興運動支援交流会」は、全国災対連の中山益則事務局長をコーディネーターとして進められ、被災3県の復旧・復興運動支援団体の代表が現状と課題について報告しました。
寒さ ・ 凍結対策がない仮設住宅
岩手県の現状について、救援・復興岩手県民会議の鈴木露通事務局長が報告しました。
総延長708キロメートルの三陸沿岸を津波が襲い、約10万4千世帯が被災しました。この地域の特徴は、6人以上の世帯の割合が全国の2倍で「核家族」ではない家族構成です。一方、65歳以上の親族のいる割合は52.5%で全国平均より17.4ポイント高くなっています。復興計画は被災した12市町村がすべて策定しました。復興計画には、①専門家の意見も入れながらやってきた経緯を尊重したもの、②地区ごとで作った計画を自治体全体の計画の中に含める、という2つのタイプがあります。②は、住民参加型の復興計画ですが、地区ごとに違いがあり、一つの自治体としてまとめる際には困難さも伴っています。
今後の課題としては、①瓦礫処理が435万トンのうち、年末現在で4%しか進んでいない、②仮設住宅は、寒さ・凍結対策を考慮した造りになっていない、③自宅で過ごしている被災者に目が届いていない、などがあります。
岩手でも原発事故による影響が広がっており、放射能汚染や全面賠償の問題があります。
財界のもうけぐちを保証する宮城県の復興計画
宮城県の現状について、宮城県災対連の鈴木新代表が報告しました。
宮城県の犠牲者は、死者約9500人・行方不明1800人を超えており、いまだに手つかずという悲惨な状態にあります。女川町は人口約1万人のうち950人の犠牲者、東松島市は住宅の7割が被害を受け6割が水没しました。最大の被害が出た石巻市は、4000人の犠牲者が出ました。現在は全員が仮設住宅か借り上げ住宅に入っていますが、地元経済が復旧・復興しないと住民は暮らしていけません。1100世帯のうち半分の世帯が失業している地域もあります。
県の復興計画は、村井知事が財界の計画をそのまま受け入れ、財界のもうけぐちにしようとしています。メガバンク構想など、県民の復興と関係のないものが盛り込まれており、県民から憤りの声があがっています。仮設住宅の建設もプレハブ建設協会に9割以上を発注しました。寒冷地には向かない造りになっており、結露がひどくてブルーシートを掛けて寝なければならない、押入はカビだらけ、という実態です。
「オール福島」で全原発の廃炉を求める
福島県の現状について、ふくしま復興共同センターの斎藤富春代表委員が報告しました。
福島でも仮設住宅の状態はひどく、「貨物列車の中にいるようだ」といわれています。1月、2月で失業保険が切れる人が1800人います。4万3000人が求職の意思表示をしていますが、求人は3万4000人です。これを何とかしないといけません。首相が「原発事故収束」を発表しましたが、わが耳を疑いました。県内の避難者は16万人で、3万1000人が仮設住宅で、6万3000人が民間借り上げ住宅、6万1000人を超える人が全国各地に避難しています。1万5000人の子どもたちも県外に避難しています。
福島産米について県は、いったん安全宣言を出しました。しかし、農民が測ったところ高い数値が出たので、みずから出荷停止をしました。原子炉の廃止について、オール福島の取り組みが進んでいます。10万筆の署名を細野大臣に提出しました。福島県知事は、18歳以下の子どもの医療費無料化を国に働きかけましたが、国はやれないと言っています。しかし、県知事は、東電の賠償金250億円を基金にして無料化を実施するという話も出ています。
3県の報告のあと、阪神淡路大震災、中越大震災被災地と、国会議員団の代表が、それぞれの経験と教訓について発言しました。
震災復興と、くらしを守る 正念場の年
総会議案を討議する第2部は、上山興士世話人(農民連)、松繁美和世話人(自治労連)を議長に選び進められました。
開会のあいさつで大黒作治代表世話人(全労連議長)は、震災復興の課題とともに、野田内閣が強行しようとしている消費税増税、TPP、原発再稼働をめぐる動きなど、多くの課題があり、「正念場の年。災対連にとって身の丈に余るものだが、力を合わせて頑張っていこう」と述べました。
「震災復興より消費税増税」と、政府を批判
来賓として、国会開会日の多忙な中を駆けつけた、高橋千鶴子衆議院議員(日本共産党)があいさつをしました。
高橋議員はあいさつの中で「野田首相は施政方針演説で『被災地に復興の槌音を力強く響かせたい』と言いながら、復興について具体的なものは何もない。力を込めて語ったのは、復興を遅らせることになる消費税増税だった」と批判しました。
つづいて、来賓のNPO法人・建設政策研究所の高木理事があいさつ。建設政策や震災の実態調査について紹介しました。
活動の経過と方針を中山事務局長が報告
総会議案の説明は、中山事務局長がおこないました。まず、2011年度の活動について報告。
全国災対連は、2011年3月11日発生した東日本大震災に対し、3月14日から被災地の状況把握のため代表を派遣しました。全労連内に「共同救援センター」をおき、救援物資の受け入れと配送、救援ボランティアの派遣を、さまざまな困難がある中で全力をあげて取り組みました。
10月9日~10日には、宮城県大崎市で今後の復旧・復興闘争を見据えて「全国交流集会」を開きました。宮入興一愛知大学教授が記念講演で、復興のあり方に関する貴重な提示をしました。
2012年度の方針として、①東日本大震災被災者支援の強化 ②被災者生活再建支援制度などの改善運動 ③被災地相互の交流の取り組み ④『災害対策マニュアル』の改定 ⑤政府・地方自治体に向けた共同の運動を強める--ことを提案しました。
提案に対する討論では5人が発言しました。
中山事務局長が「討論のまとめ」をおこない、今年度の重点的取り組み、被災者生活再建支援法の改善を求める署名運動などについて述べ、議案は決算・予算を含めて採択されました。
閉会のあいさつは、住江憲勇代表世話人(保団連会長)がおこないました。
新年度役員には次の各氏が選任されました(敬称略)。
▽代表世話人 大黒作治(全労連議長)、住江憲勇(保団連会長)、合志至誠(兵庫県民会議代表委員)=以上再任、笹渡義夫(農民連事務局長)=新任 ▽世話人 18人(再15人、新3人) なお、第1回世話人会議で事務局役員に次の各氏を選任しました(敬称略)。▽事務局長・中山益則、▽事務局次長・羽田範彦、谷川正嘉=以上再任、▽監事・中山真=新任
総会には、国民新党の下地幹郎幹事長、日本共産党の山下よしき参議院議員からメッセージが寄せられました。
【全国災対連へ新たに加盟した団体】
東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議(略称=救援・復興岩手県民会議)
東日本大震災・原発事故被害の救援・復興めざす福島県共同センター
(略称=ふくしま復興共同センター)